前提 — なぜ自分で作ったのか
ANDOORはデザイン制作会社として創業した。クライアントのサイトは何十と作ってきた。だが、自社サイトはずっと後回しだった。「靴屋の子が裸足」の典型だ。
外注する選択肢もあった。だが、今の自分にはAIがある。コンセプト設計からコーディング、デプロイまで、AIと2人でどこまでやれるのか。実験も兼ねて、自分で作ることにした。
技術選定 — Astro + Tailwind CSS v4
フレームワークは Astro を選んだ。理由は3つ。
- 静的サイト生成(SSG)に特化 — コーポレートサイトにSPAは不要。HTMLを吐くだけでいい
- コンポーネント指向 — ヘッダー・フッターの使い回しが効く
- Markdownでブログが書ける — Content Collectionsで記事管理が完結する
CSSは Tailwind CSS v4 を採用。v4はCSS-firstの設計に変わり、@theme ディレクティブでデザイントークンをCSSファイル内に直接定義できる。設定ファイルが不要になった分、セットアップが速い。
ホスティングは Cloudflare Pages。GitHub連携で git push するだけで自動デプロイ。CDNも無料。選ばない理由がなかった。
デザイン — ブルータリストという選択
デザインは ブルータリスト にした。装飾を削ぎ落とし、タイポグラフィとコントラストで勝負するスタイル。
なぜブルータリストか。
- 画像素材が不要 — ストックフォト探しの時間がゼロになる
- コンポーネントがシンプル — AIが生成するコードの精度が上がる
- メッセージが際立つ — 余計な装飾がない分、コピーの力がそのまま伝わる
つまり、AI × 一人開発との相性が極めて良い。
フォントは3種。見出しに Anton(ディスプレイ)、本文に IBM Plex Mono(モノスペース)、日本語に Noto Sans JP。この3つだけでブルータリストの雰囲気は十分に成立する。
アクセントカラーはページ読み込みのたびにランダムに変わる仕組みにした。5色(ブルー、グリーン、ピンク、パープル、イエロー)からJavaScriptで選択し、CSS変数を差し替える。ロゴ画像も色に連動して切り替わる。遊び心と、「毎回違う表情を見せる」というブランド体験を両立した。
AIとの協働 — 実際のワークフロー
午前: 設計とベース構築
- サイトマップとページ構成をAIと壁打ちして決定
- デザインシステム(カラー、フォント、スペーシング)を定義
- Layout、Header、Footer、SEOコンポーネントを生成
- トップページのセクションを順に構築
午後: コンテンツとページ量産
- 各サブページ(About、Services、Products、Work、Careers、Contact、Legal)を一気に作成
- i18n対応(日英切り替え)を実装
- ブログ機能(Content Collections + 記事テンプレート)を追加
- Cloudflare Pagesにデプロイ、ドメイン設定
AIに任せたのは、主に コーディングと構造化。自分がやったのは コンセプト、コピーライティング、ディレクション。
重要だったのは、最初にデザインシステムを厳密に定義したこと。CSS変数、フォント、間隔のルールをCSSファイルに書き込んでおけば、AIはそのルールに従ってコンポーネントを量産できる。ルールが曖昧だと、ページごとにデザインがブレる。
数字で振り返る
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 総ページ数 | 20ページ(日英各10) |
| コンポーネント数 | 5(Header, Footer, SEO, Layout, TOC) |
| 開発期間 | 1日 |
| エンジニア | 0人 |
| デザイナー | 0人 |
| ホスティング費 | 月額0円(Cloudflare Pages無料枠) |
| Lighthouse Performance | 95+ |
やってわかった限界
万能ではない。
- コピーライティングはAIに任せきれない — ANDOORのトーン「断言・短文・実体験ベース」を再現するには、人間が書いて見せる必要がある
- 画像生成は別軸 — ロゴやOGP画像はFigmaで自作した。テキストベースのAIではカバーできない領域
- レスポンシブの微調整 — 大枠はAIが作れるが、768px以下の細かい調整は目視確認しながら人間が詰める必要があった
まとめ
コーポレートサイトをAIと1日で作った。これは「AIがすごい」という話ではない。10年以上Web制作をやってきた人間が、AIをツールとして正しく使った結果、こうなったという話だ。
AIは指示の精度に比例してアウトプットの質が変わる。デザインシステムを定義できるのも、コンポーネント分割の粒度を判断できるのも、制作経験があるからだ。
逆に言えば、その経験さえあれば、もうチームを組まなくても1日で本番レベルのサイトが作れる。これが2026年の現実だ。