はじめに
ANDOORは今期で12期目を迎えた。2014年の創業だ。だが「12年やっている会社」という表現は、実態の半分も伝えない。この記事では、AIエージェントを「チームメンバー」として構築するに至った背景 — つまり、なぜそうせざるを得なかったのか — を含めて書く。
5人から1人へ
創業時、スタッフは5人いた。デザイン制作会社としてのスタートは順調だった。案件も回っていたし、クライアントからの評価も悪くなかった。
だが、一気にスタッフが辞めた。
理由はここでは書かない。ただ、結果として残ったのは自分ひとりだった。クライアントに迷惑はかけられない。進行中の案件は全て自分で巻き取った。協力会社の力も借りながら、なんとか回した。
ひとりで10年
その後、フリーランスで信頼できるメンバーが固定化していった。デザイナー、エンジニア、ライター。必要なときに声をかけ、案件単位で動く体制。正社員はゼロ。経営者は自分ひとり。
この体制で10年。売上は立つ。クライアントとの関係も良好。だが、ひとりで回す経営には構造的な限界がある。
- 思考の壁打ち相手がいない: 戦略も企画も、最終的には全て自分の頭の中で完結する
- 即応性の欠如: フリーランスには別の案件がある。急な依頼に対応できないことも多い
- スケールしない: 自分の稼働時間がそのまま売上の天井になる
この3つは「慣れる」問題ではない。構造の問題だ。
転換期 — AIとの出会い
2025年が転換期だった。AIが実務に使えるレベルに到達した。
最初の使い方は控えめだった。企画書の最初のタタキを作ってもらう。ChatGPTと壁打ちする。市場調査を依頼する。便利なアシスタント、という位置づけだ。
だが、使い込むうちに気づいた。これは「便利ツール」ではない。これまで絶対に不可能だった業務領域をカバーできる存在だ。
具体的には、こういうことだ。
- 深夜2時に思いついた戦略を、その場で壁打ちして検証できる
- コードを書きながら、同時にドキュメントを整備できる
- プロジェクトの文脈を一度学習すれば、引き継ぎロスがない
- 必要に応じて並列タスク数を増減できる。しかもコストは変動費
10年間解決できなかった「構造の問題」が、AIによって一気に溶解し始めた。
AIチームの構築プロセス
Phase 1: 単一エージェント期
Claude単体での壁打ちから始めた。プロンプトの工夫で一定の品質は出せたが、コンテキストの分断が課題だった。長い会話になると文脈が薄れる。専門外の領域では精度が落ちる。
Phase 2: 専門化と役割分担
エージェントに「キャラクター」と「専門領域」を定義し、役割分担を導入した。調査担当、実装担当、レビュー担当。それぞれが自分の得意領域に集中する形で分業体制を構築した。
Phase 3: 自律チーム
タスク管理システムとの連携により、エージェント同士が自律的にタスクを受け取り、完了報告し、次のタスクを拾う仕組みを構築。人間(自分)はディレクションとレビューに集中できるようになった。
現在の体制
- 戦略・ディレクション: 人間(自分)
- 調査・分析: AIエージェント
- 実装・コーディング: AIエージェント
- ドキュメント・コミュニケーション: 人間 + AI協働
12年目にして、ようやく「チーム」と呼べる体制が整った。メンバーの大半がAIだという点を除けば。
まとめ
AIチームは「銀の弾丸」ではない。だが、正しく設計すれば、一人の力をチームレベルに引き上げることは確実にできる。
振り返れば、5人のスタッフが辞めたあの日から、ずっとこの答えを探していたのかもしれない。「ひとりでも、チームと同じだけのことができる方法」を。10年かかった。だが、見つけた。
重要なのは、AIに任せる範囲の明確化と、人間にしかできない判断への集中。そしてもうひとつ — 10年間ひとりで回し続けた経験があるからこそ、AIに何を任せるべきかがわかる、ということだ。